心理学の理論と実践

●人生そぞろ歩き

8.若い障害者の友人に

2000年2月17日
片マヒ自立研究会 主宰 森山 志郎

若い障害者の友人に

1.年寄りのたわごと
2.あなたや私の「掛けがえのない人生」
3.「命の鎖」という見方
4.人生とは
5.障害者の人生
6.復職・就職・年金生活の選択
7.復職の前提―再発防止と余病の併発防止
8.復職に当たっての勇気
9.これから定年を迎える方に

1.年寄りのたわごと。

  • 私には4人の妹と4人の姪がいますので、皆さんが一生懸命、リハビリをしながら社会復帰に向けて頑張っている姿を拝見すると、何か他人事に思えません。

  • 若い障害者の友人に私は非常に幸運にも障害者として15年の人生を加えて、70の古稀を祝うことができました。そしてしみじみと「人生には楽しいことがある」と喜ぶことが出来たのです。
  • 若い皆様方も私同様に是非、古稀といわず健康に人生を味わって欲しいものと願っております。

  • 研究会の席上では、皆様から色んなお話を伺っていると、つい、感心することが先立って、「どうか、それが旨く行きますように」と聞いてしまい、「こんな問題はどう考えてクリアされたのかな」と年寄りらしい余計なお節介かも知れませんが、質問するタイミングを失ったり致します。

  • 皆様より多少長く障害と付き合い、人生の道を歩いてきたこの年寄りの白髪頭に免じて、少し、私が気を付けてきたことなどを整理してみました。
  • もし、参考にできる部分があれば、参考にして下さい。

2.あなたや私の「掛けがえのない人生」

  • 若い障害者の友人に病気をしたお陰で、人生とは私の自由にならないという事を知らされました。

  • 呼吸するとか心臓の鼓動とか、外敵から身を守る免疫の働きなどは、私の命令の外にあって、それが私の命を維持しているのです。

  • 幾ら「生きたい」と願って、栄養を摂ってもこの部分が停止すれば人生は終若い障害者の友人にわりになるのです。この原理は私もあなたも変わりがありません。

  • その人生の中で、私やあなたにできることは、その生きることを許された最後の日まで、自分の「命」に対し最善を尽くして生きることしかありません。
  • 私はそれを「命が喜ぶ方向」に自分の「出来る範囲」の努力を積み重ねることが最善ではないかと思っています。

3.「命の鎖」という見方

  • あなたや私が生れるについては、幾億年前に生れた「一つの命」が、気の遠くなる歳月をかけて、色んな努力をして自己改善を重ねて能力を拡大し、ここまで引き継がれて「あなたや私」になっているのです。

  • 若い障害者の友人に不思議にも、その間、ただの一度も切れたことのない「鎖」で結ばれているのです。
  • きっと、天災や戦乱、飢饉のため多くの人の命が失われ、その命は引き継がれないままになっています。

  • 大きな幸運と環境の変化に適切に対応した、その時代時代の命の担い手である、ご先祖の努力が今日を作っています。

4.人生とは

  • 若い障害者の友人にその「私」は成長して成人すると、社会の一員として有能な一員になる訓練を積み、ある自信が生れて人生の伴侶として、私同様の「命の鎖」を持つ妻と共に人生を歩み始めました。

  • そして激しい戦後の貧困や、産業の変化等に対応して、厳しい国際競争の中で「命」を養い、生存競争を戦い抜きました。

  • 若い障害者の友人にそして、幸運にも2人の子供に恵まれ、妻と2人の家族は子供を加えた4人の家族に成長し、この家族の成長を中心にした人生が始まったのです。

  • 若い障害者の友人に日本の社会では、一般的に家族が社会の中で生活していくためには、妻は育児と家事を中心に、男性は家計の必要な金銭を求めて外に仕事に出かけることになったのです。

  • 私も例外ではありませんし、皆さんもそうだと思います。
  • そして多くのハッピーな方々は、そのまま健康に定年の節を迎えるのですが、そこには私の知らない課題に遭遇することもあるでしょう。

5.障害者の人生

  • 若い障害者の友人に会社で定年を迎えても、働き蜂といわれ、ワークホリックと嘲笑される生き方しか出来ない、不器用な人間でした。多分、皆様の大部分もそうだと思います。
  • なぜなら日本の社会では、伝統的にそのように躾られているからやむを得ないことと思います。

  • 若い障害者の友人にご多分にもれず、私も定年の延長を願い出て、会社の承認を得て1年後、イライラの続いた夏が過ぎて秋になった頃、突然の脳梗塞で入院し、右手が廃用マヒの2級障害者になったのです。

  • 入院中の病院で周囲を眺めると、ここで、幾つかの人生を選ぶ選択肢があったことに気がつきました。

  • 若い障害者の友人に1つは年齢から生れる選択肢で、私を含めて若い人ほど復職をめざして、夫婦共々必死に戦っていました。

  • 若い障害者の友人にそれは涙ぐましいほどの努力でしたが、時に、それを嘲笑うかのように肝臓障害を併発させ、絶望にうちのめされたケースもありました。

  • 若い障害者の友人に高齢者の中には、痛みの多いリハビリ訓練も人生も放棄して「好きなタバコは止めないよ」とタバコを吸い続け、間もなく亡くなった人もありました。年齢により、その人の抱える課題が違うので、こんな違いがあるのでしょう。

  • 更に家族関係の違いがありました。この病気をきっかけに夫婦の協力関係若い障害者の友人にが一段と深まり、「今度は私が支える番だ」と涙ぐましい二人三脚の人生を踏み出す人もありました。

  • 反対に、これを機会に結婚関係を解消する人は意外と沢山ありました。

  • 障害者になっても家族の中心に座らせる姿勢を家族が持つか、それとも「積年の怨みを晴らす」と見捨てる人もありました。

  • つまり、障害があっても、社会復帰して自分が家族を支えていく人。
  • 本人の労働力の回復が不十分であるが、家族構成が経済的な収入を必要とする場合、家族との間で、「役割の分担」を変更して、家族の方が職場に出て収入を維持する役割を果たし、本人が家庭内の労動を選び、大事な家庭を維持する生き方を取っている方もありました。

  • また逆に、これを機会に家族関係を清算して、本人は労働の役割を放棄して「生活保護を受ける者」として個人として生きる道を選び、離婚した妻は自立して子供の養育を選ぶ生き方もありました。病気になるまでに培った夫婦のあり方が問われる局面でした。もっと色んな生き方があると思うので、なるべく大勢のかたの記録を参考にして下さい。

若い障害者の友人に


6.復職・就職・年金生活の選択

  • 若い障害者の友人に幸いにして、本人の平素の評価が高く、勤務先の理解力が高く、復職が許される場合は、最高の選択になると思います。
  • 長年慣れた仕事であれば、早く職場の戦力にもなりますし、一つの書類を作るにも、一通の報告書を作るにも、それぞれに異なる企業文化の違いに悩まされません。

  • 長年築いた「人間関係」という無形財産が、傷がつかずに残ることも復職した後の精神的安定にも繋がります。

  • 若い障害者の友人にハローワークを通じて、未知の就業場所を得た場合、新人という緊張が伴いますから復職よりも辛い選択になります。

  • 企業文化も人間関係も異なるので、器用に出来る人は少ないかも知れません。相当の精神的疲労が予測されます。

  • リハビリをしながらそのまま、退職と年金生活の道を歩くケースもあります。
  • 私の場合は、これに当たります。会社が予定している年代を越えたこと、子供もすでに成人していること、自分の家も既に住宅ローンの返済も終わっていたこと、と人生の夏が過ぎ秋も深まった年代―人生の最終段階にある年代のコースーとして退職金の食い延ばしと年金で、細細とした生活に入るケースもあります。

7.復職の前提―再発防止と余病の併発防止

  • 若い障害者の友人に何よりも、脳卒中になったという事実は重く受け止める必要があります。

  • 医師によれば「平均余命は五年」という人もあります。
  • この事実は、私やあなたの体質とか、生活習慣に何らかの問題があった、という証拠でもあるのです。

  • 河内博士の成人病予防研究の報告によると、脳卒中にかかる危険因子の中で「これまでに脳卒中を患った」ことが、一番大きな因子に上げられています。

  • 若い障害者の友人に医師の中には、「再発は心配しても仕方がない」と投げやりな方もあると聞きます。
  • 確かに病気は避けられないことも多いのですが、避けることができる条件は出来る限り探して対策をして生きたいのです。

  • 再発をしますと例外なく、障害が酷くなっていますから注意したいと思います。
  • つまり、再発の危険度と仕事のストレスを旨く秤にかけて判断して下さい。

  • 同時に余病の併発という問題があります。半身にマヒがある以上、血液の流れも含め身体の不十分な所が多い。そのことと余病が直結して考える必要はないかも知れないが、脳卒中になった原因に「動脈硬化」があったり「糖尿病」があったりするので、それらが原因で生れる病気が沢山ありますから、自分の健康管理は大事にして下さい。

  • 若い障害者の友人に私たちの仲間だった方は、病気になっても家族の中心にあって、ハローワークを通じて職場を確保していました。元気に仕事していたのに、体質的な高血圧のために軽い発作を起こして入院、退院して直ちに訓練の為に外出してそこで急死しました。

  • 明日の夢を見ながら人生をギリギリまで生き抜いた生き方でした。生命維持の管に取り囲まれて物も言えずに生きているよりも、私には羨ましい生き方と考えています。

8.復職に当たっての勇気

  • 若い障害者の友人に復職すること自体が大変に勇気のいる行動だと思います。
  • その「一歩」は大変大事にしたいと思います。
  • そして必要な勇気は、「私はこれが出来ません」と明確に周囲の人に知って貰うことです。

  • 昔の能力と違った、「新しいあなた」は、今の新しい能力で仕事に取組まないとなりません。そのこと周囲が理解していないと困ってきます。

  • 「こんなことができないの?」そんなに思われることが沢山ありますが、これをいい加減にしておくと、後で一層困難な問題になります。
  • 「障害のために、私は、これは出来ない」と職場の上司や同僚の理解をとれると良いと思います。

  • 次に「三歩前進、二歩後退」という諺がありますが、恥ずかしいと思わず前進のみでない生活態度を身に付けましょう。これは物事が一直線に行かないことの意味です。

  • この片マヒの回復は本当にそう思います。
  • 自分で気のつかなかった障害に気がつくことも多く、慌てさせられます。私は回復していると思うのに、突然、歩くのが疲れ易くなることがあります。

  • 若い障害者の友人に「なぜ?」「糖尿病?」「新しい弱い筋肉が動いている?」「年を取ったからだ」色んな原因があるとおもいます。

  • 当然、収入は昔よりも低くなるケースも増えてきます。しかし、こんな代償で家庭が、家族が崩壊せずに維持できれば、万々歳、素晴らしいことではないでしょうか。

  • 若い障害者の友人にあなたや私が「守るべきもの」は「家庭」という命の生活する場であり「家族」という共通の命なのです。

  • 私の先輩に、家族以上に「組織」を守るために自分の命を縮めたり、過去の「栄光」を守ろうとして自殺した方もありました。一度、死にかけた私としては、そんな生き方には疑問があります。

  • どうしたら「私のこの命」を充分に「生かす」ことが出来るか、そしてその継承者である「家族の命」を大事に育てるか、こんなことに勝る「価値」の目安はないと思うのです。

若い障害者の友人に


9.これから定年を迎える方に

  • 年金生活に入った場合は、「生甲斐」を持ち続けることが課題となります。
  • 障害を得ても、職場に戻って定年を迎えた場合、本当に長らくご苦労様でした。

  • ただここで、恐らく初の「職場離脱」による虚無感に襲われるでしょう。
  • これは仕方のないことで、心身に溜まった諸々を拭いながら、新しい高齢者としての生き方を訪ねて下さい。

  • 中年における典型的な課題ですが、そんな心を切り替えるには充分な時間があります。青年時代は社会的な責務を背負わなくても許されるように、この切り替えの期間は同じ意味があります。

  • 共にモラトリアムと割り切って、いろんな可能性に挑戦してみるのも方法でしょう。
  • 暫く遠くの風景の中に自分を置いて眺めてみるのも一興ではないでしょうか。
  • やがて新しいアイデンティティを再び獲得して高齢者社会にスタートをして下さい。

若い障害者の友人に

  • その時には、「あなたにふさわしい生き方」というスタンスを外さないで下さい。
  • そして、今度の仕事は、金銭的な報酬よりも、あなたの命を豊かにする、これまで私たちを支えてきた社会に還元する、そんな味付けが出来ると素晴らしい老後の人生が約束されるでしょう。

若い障害者の友人に

1.年寄りのたわごと
2.あなたや私の「掛けがえのない人生」
3.「命の鎖」という見方
4.人生とは
5.障害者の人生
6.復職・就職・年金生活の選択
7.復職の前提―再発防止と余病の併発防止
8.復職に当たっての勇気
9.これから定年を迎える方に

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