介護の立場から

●家族館

13.介護の立場から

介護の立場から


平成17年7月20日・横浜市立大学

  • 介護の立場から私は横浜市泉区に住んでいる一主婦です。
  • 今日は介護者の立場からお話をして欲しいという事でしたので、20年前夫が脳梗塞で倒れ、それからの人生を振り返りながら、お話をしてみたいと思います。

  • 今、私は皆様を前にして羨ましいほど、眩しいきらめきを感じます。 若いと言う事は素晴らしいですね。

  • 私が皆様と同じ年齢の頃は、日本が戦後の復興に忙しく、社会が目まぐるしく移り変わる時代でした。私の学生時代、日本の一般社会は、豊かな現在では考えられない程、経済的にも貧しく、不自由な生活をしていたのです。

  • 介護の立場から特に戦時中、戦後は、何事につけて我慢をしなければならない事は、沢山有り、それが当たり前でした。又、家族関係は、もっと緊密で2世代は勿論、3世代同居というのも多く、沢山の兄弟、姉妹と、深く関わりあいながら暮らしていました。

  • 従って、楽しい事は然ることながら、辛い事、耐えて生きている人の話もよく聞きました。しかしその中で、親から子供へ伝えられた揺ぎ無い愛情、生活の智慧は、折に触れて、様々な困難を乗り越える力になったことも事実だと思います。

  • 介護の立場からきっと私は、皆様のお祖母様と同じ世代でしょう。
  • ですから、感覚的には随分かけ離れたお話だと感じられるかもしれませんが、どうぞお祖母さんからのメッセイジだと思って聞いてください。

  • 専業主婦だった私は、夫が倒れた時は、正に茫然自失、これからどうしたら良いのか本当に迷いました。
  • 家の中は任せられていましたので、これまでにも色んな困難な事に出会いましたが、生活の基盤が崩れる不安、は感じたことはありませんでした。
  • これからの生活形態の変化に対する不安、一人で決断する勇気の欠如、考えたらきりが無いほど不安だらけでした。

  • 介護の立場からその不安の中でも、一日は目まぐるしく過ぎて行きます。
  • しかし、逃げ出そうとは、つゆ思いませんでした。
  • 家族の危機に対する気持ちに何の疑いも持たなかったからだと思います。
  • そして、どうしたら今後の生活をスムースに送る事が出来るか、どんな事だったら出来るのか真剣に考える毎日を過ごしました。

  • まず、夫の障害によって損なわれた能力で、私がお手伝いできる範囲を観察すると、移動能力の必要性が感じられたので、車の運転を再開しました。

  • 介護の立場から家の中の生活では、転倒などの危険を避けるために、マット、スリッパ、ワックス塗りを、止め、応接セットの替わりに大きなテーブルと肘掛け椅子、を用意するなど、取り敢えず困る所から最小限の改良をしました。そして在るものを利用する工夫をして凌ぎました。

  • このような事をしながら、夫がしようと思う事に付き合うことにしたのです。
  • かなり大変だろうと思って覚悟をして取り組んだのですが、不思議な事に、真剣に取り組んでみると、色んな情報が飛び込んできます。
  • そして助けていただける確かな道が見えてくるのです。
  • そのうちに工夫すればかなりの事が出来、出来る範囲も広がる事がわかり、喜びました。

  • いつの間にか支えていると思った夫に支えられている事も多くなって、協力しながらこの20年間、色々の事を達成してきました。

  • 介護の立場から私は、最近しみじみ思います。
  • 暗く苦しい時代を知っているから、現在の平和で自由な時代が有り難く得がたいものだと思えるのだと。
  • 皆様は、この幸せな時代を生きられるのですから、個人的な小さな困難は、充分クリヤー出来るはずです。

  • 困難な事に出会った時、その事を恨んだり、他人を羨ましがったりしないこと。
  • 逃げないで其の物の本体を見極める勇気を持ち、そして明らかにすること。
  • 其の上でどうしたらより良い状態になるかを考えて取り組むこと。

  • 一度に完全を目指すのではなく、希望をもてる方向へ継続する努力を惜しまないこと。
  • その過程で、多くを望まず、本当に必要なもの、自分に合った、自分らしい、ものを育てていくこと。

  • などがとても大切な事だったのだと私は思いました。

  • 困難を乗り越えて得た喜びは、単に与えられた喜びとは又違って、心の底に響く満足感、達成感に類する、嬉しさを伴うものである事を皆様にお伝えしたいのです。
  • どうぞ何事にもめげないで、賢く立ち向かう勇気を忘れないで下さい。

                                  以上

介護の立場から

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