夫の介護、感動と共に

●家族館

5.夫の介護、感動と共に

夫の介護、感動と共に

森 山 晏 子

夫の介護、感動と共に

  • 眼の光がすーっと弱くなって,義父は静かに旅立ちました。
  • 20年前の冬のことです。

  • 家族皆で、回復する事をどんなに願っても叶えられることなく、只ただ人の力の空しさを痛いほど感じさせられた瞬間でした。夫の介護、感動と共にそれまで辛いと思った介護の日が、総て後悔になるほど悲しく、亡き後の空虚感は、埋めようもなく深かったことを思い出します。

  • 義父は入院を拒んで、自宅療養を強く望んだので、義母と私は必死でした。
  • 今でも義父が寝込むその日まで、翻訳していたタゴールの詩を手にする時、「生きる」ということ、そして「死の厳しさ」をその姿の中で教えてくれていたのを思い出します。

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  • 思いもよらぬその6年後、夫が脳梗塞で倒れた時、霞む眼で原稿用紙の罫を確かめながら、字を書いていた義父の姿が浮かび、どんな姿になっても生きていて欲しいと願いました。

  • しかし、障害者となった夫を介護すると言うことは、平穏な一日を、と心がけた義父の時とは異なっていました。

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  • それは、これから先の人生を、共にどう生きたら良いのか、と言うことを真剣に考える毎日で、暗中模索の不安な日が続きました。

  • でも、14年経った今、障害は変わりませんが、夫は社会活動に背を向けずに過ごしますので、新たな出会い、感動を共にする事が出来るようになりました。これまで支えてきた苦しみも、振り返ってみれば「良くぞ越えてきた」と言う喜びに変わって参りました。
  • この先、一層の「老い」を迎えて、お互いに精神的には、健康でありたいと話すこの頃です。
  • (1999年4月15日発行 「アイリス泉 3周年記念誌」掲載)