「最高のエンパワーメント」とは

●論文館

4.「最高のエンパワーメント」とは

[ページ内移動ツールボタン]

 1. 「一言の重み」
 2. 最高のエンパワーメントは「希望を持つ」ことから生まれる。

LinkIcon「最高のエンパワーメント」とは TOP

「最高のエンパワーメント」とは


 ←1. 「一言の重み」→

  • 1. 「一言の重み」
    • 「素晴らしい写真集ですね」、と私の写真集「愛しの大地」を手にとってOTの彼女は出来栄えを誉めてくれた。

    • 「でも、森山さんの障害受容はどういう風にのりきったの?」。この厳しい問いに得意になっていた私は冷水を浴びせられた思いがして言葉を失った。

    • 後日談になるが彼女は私が当然「受容」を済ませていると信じて軽い気持ちだったとのことだった。

    • それは、右麻痺2級の障害者手帳を頂いて、保健所のリハビリ教室で活力が少し回復した頃、「何かやらないと」と試みた仕事が、この写真集の作成だった。自分でもすっかり天狗になり「障害のある写真家になれるか」と、自惚れて次の写真集の構想を考えていた時だった。

    • これをきっかけに、私の障害受容は、本格的な工夫を始めた、その後二年を掛けて、ようやく、新しく成長した「障害を持つ元気な老人」となった。

「最高のエンパワーメント」とは「最高のエンパワーメント」とは

    • 福沢諭吉が述懐した「一身で二生を生きる」境地に至ったのである。

    • その成果として、無理な背伸びをしないから精神的に楽になり家族は大きなストレスから開放された。

    • この「狭き門」より入ることを示唆してくれたOTさんに心から感謝している。

    • これが何故、旨く行ったのか振り返って見て社会学者の細田氏の著書「脳卒中を生きる意味」の中に回答を見出だした。氏は「変容にいたる出会い」の重要性を述べている。その「出会い」は、決して権力的でなく、形式的でなく、おざなりの出会いではなく、「患者に対する愛情が感じられる場合」のこととされている。

    • その理由を私なりに考えてみた。

    • それは患者が閉ざした心を開く条件が満たされたからと思う。
    • 障害を得て、不安な患者の心は固く閉ざされている。その心に大切なメッセージを届き響くのは、自分を親身に考えてくれる愛情を感じたときである。

「最高のエンパワーメント」とは「最高のエンパワーメント」とは

    • これ以上傷つかないと分かれば、安心して、貝殻のような蓋を開けて、メッセージに触れることが出来るのである。

    • 私の「出会った」OTさんは私と同じ地方の出身者であり、お互いに訛りのお国言葉で話すことが出来たし、写真の愛好家だったので作品を遠慮せずに批評することもでき、同じ目線の高さで話し合えたので、彼女の言葉を素直に受け取ることが出来たのでなかろうか。

    • 今、医療関係者の間で「エンパワーメント」が関心の的になっている。それは患者を強くして病気に打ち勝つ能力を高めないと、従来の「よらしむべし、知らしむべからず」と言う封建時代の意識では、近代人の意識にそぐわないのである。特に「エンパワーメント」の教育不足は、国際的に見ても日本の立ち遅れが指摘されている。

「最高のエンパワーメント」とは「最高のエンパワーメント」とは

    • OTの皆さんが、目線を同じにした、親身な「一言」を受けるとき、痛みに耐えていた心は開いて、その言葉により「変容」することが出来るのではないだろうか。その結果、本人が「やる気」を起して皆さんの指導を次々に実行が出来るようになれば、努力の効果は成果につながると思う。

    • 是非、「変容」につながる「一言」があることを考えて欲しいと思う。


 ←2. 最高のエンパワーメントは「希望を持つ」ことから生まれる。→

  • 2. 最高のエンパワーメントは「希望を持つ」ことから生まれる。
    • 突然の危機に陥った時、私は希望も生きていく力も失って、呆然自失の状態になっていた。入院した頃は、マヒのため固く握りしめた拳も、マヒが取れると直ると思っていた。

    • 医療関係者から「きっと動くようになるよ」と励まされると、その一言は大きな喜びとなり、最初の絶望から救い出してくれた。

「最高のエンパワーメント」とは

    • しかし、動かぬ筋肉が痩せ細り、関節は固くなり障害が「治らない障害」として残される現実を知ると、次の、より深い絶望に沈み、人生を諦める気持ちが支配するようになった。

    • 少し歩ける体になって退院したが、地域社会で障害者仲間の生き方とふれあう内に、脳卒中のリハビリとは、一律ではないオーダーメードの進め方が必要な世界に思えた。

    • 二年程して、大田仁史先生が、「福沢諭吉は一身で二生を生きた、と話していた」事を例に、新しい生き方を説かれた。

    • その言葉に、私の目から鱗が落ちた。

    • なぜなら「環境や自分の変化に従った生き方」でなければ、生き残れないこと、希望がないことが理解できたからであった。

    • 希望を実現する情報があっても、自分が吸収して、有用な武器に変えないと、障害に対応できる能力が向上し、社会復帰に必要なエンパワーメントとして熟成されない。

「最高のエンパワーメント」とは

    • 人は、何を武器に人生に挑戦出来るのか、障害者の生き方には多様性がある。

    • 医療技術が日進月歩とはいえ、利用できる技術は限りがあるし、どんな選択をするか、専門家と相談して賢明な選択をしたいものだ。

    • 私は、生活の自立を急ぎ積極的に「利手交換」の道に進んだ。幸い、書道師匠と出会って左手の習字に取り組んだお陰で、左手に未知の資源が眠っていたことを知った。掘り出した新しい能力が私の新しく生きる武器となった。これが自信と誇りを回復させてくれ、新しく生きる希望を生み出した。

    • 私が選んだ道は、手足が不自由になった事実を否定せず、新しい人生を構築する道である。

    • それは「障害の受容」と、その「障害」を包み込んで、より高くより大きく成長した。これは自分の否定ではなく、新しい自分を作り育てる新しいアイデンティティーへの修正である。

    • この「障害を受容して新しい生き方」を手に入れるには、長い歳月がかかるが、OTの皆さんの暖かな目線の指導が必要になる。

    • この、希望を生み、持ち続ける条件は、コツコツと努力する本人と、それを支える家族の理解と協力―愛情―が大事であることを説いて欲しい。薬や注射で直す病気ではなく、希望を実現したい本人の「やる気」と、OTのふさわしい指導とが伴って、効果があがる領域と思う。

    • 「念ずれば花ひらく」と詩人が詠った様に、リハビリテーションは心身が影響しあう。エンパワーメントの向上に結びつくようなどんな小さな希望でも、探し出して指導して欲しい。

「最高のエンパワーメント」とは

[ページ内移動ツールボタン]

 1. 「一言の重み」
 2. 最高のエンパワーメントは「希望を持つ」ことから生まれる。

LinkIcon「最高のエンパワーメント」とは TOP